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対応どうする?「北海道・三陸沖後発地震注意情報」

執筆者佐藤裕太(記者)
2023年01月10日 (火)

対応どうする?「北海道・三陸沖後発地震注意情報」

12月16日から運用が始まった「北海道・三陸沖後発地震注意情報」。青森県内では、7割にのぼる28市町村が対象になっていて、しかも「おおむね2年に1回程度」出されることが見込まれています。

情報が出された場合、どんな対応が必要になるのでしょうか。

「北海道・三陸沖後発地震注意情報」とは

簡単に言うと、北海道・三陸沖で起きる「後発地震」への注意を呼びかける情報です。では、「後発地震」とは何でしょうか。

「後発地震」とは

文字通り「後に発生する地震」。大きな地震の後に起きるさらに大きな地震で、例えば、11年前の東日本大震災では、3月11日にマグニチュード9.0の巨大地震が起きる2日前、3月9日にマグニチュード7.3の地震が発生し、最大震度5弱の揺れが観測されていました。

今回運用が始まった「北海道・三陸沖後発地震注意情報」は、この東日本大震災の例のように、▼「北海道・三陸沖」の想定震源域で▼マグニチュード7以上の地震が発生した場合、それに続いてマグニチュード9クラスの「後発地震」が発生する可能性が、通常よりも相対的に高まるという考え方のもとに導入されました。

「後発地震」が起きた場合

情報は、このエリアで「後発地震」が起きた場合に▼高さ3メートル以上の津波、または▼震度6弱以上の揺れが想定される地域を対象として出されることになっていて、青森県内では7割にのぼる28の市町村が対象になっています。

マグニチュード7以上の地震が過去100年間に49回発生

しかも、「北海道・三陸沖」のエリアでは、マグニチュード7以上の地震が過去100年間に49回発生していて、この情報も「おおむね2年に1回程度」出されることが見込まれています。

どんな対応が求められる?

発生の可能性が相対的に高まっている

2年に1回というとかなりの頻度ですから、情報が出された場合の対応を整理しておく必要があります。ただ、情報が出されても必ず発生するわけではなく、あくまで「発生の可能性が相対的に高まっている」ことを示すものです。したがって、この情報が出ても避難の呼びかけは行われず、内閣府のガイドラインでは「社会経済活動を継続した上で、可能な限り必要な対策を取る」とされています。

揺れ・津波警報

こうした対応が求められる期間は情報が出されてから1週間ほどで、揺れを感じたり津波警報が出されたりした場合に直ちに避難できる準備を徹底することが呼びかけられます。

具体的な対応の例として、▼家庭では、すぐに逃げられる服装で寝たり貴重品など非常時の持出品を近くにおいておいたりすること▼企業では、津波で浸水のおそれがある場所などでの作業を控えることなどが挙げられています。

最大5.4mの津波想定 青森港の事業者は

ただ、例えば港湾関連の事業者は、津波で浸水のおそれがある場所での作業ができなくなってしまうと、「社会経済活動を継続」とはいかないので、なかなか難しい部分もあります。

会議の様子

最大5.4mの津波が想定されている青森港。12月9日、かつての青函連絡船「八甲田丸」の船内で、フェリー会社や運送会社のほか、石油やガスのターミナルを持つ会社など、青森港に拠点を持つ事業者が集まって、津波や台風の際の対応を話し合う会議が開かれました。

気象台担当者

この中で、気象台の担当者が「後発地震注意情報」について改めて説明しました。
会議では、津波警報や注意報が出された場合に、警戒や避難を行うよう勧告を出す指針を定めていますが、「後発地震注意情報」については、新たな指針を追加するなどの対応は見送りました。

理由として挙げられたのは、▼「後発地震注意情報」は警報や注意報クラスの情報ではないこと、▼1週間におよぶ長期にわたって制限をかけると、社会経済活動に大きな影響が出ることで、まずは、各社の運航基準などで対応を判断することになりました。

フェリー

では各社はどう対応するのでしょうか。参加したフェリー会社に話を聞くことができました。
青森・函館間は、2つのフェリー会社が1日に合わせて32便を運行していて、まさに本州と北海道を結ぶ物流の大動脈です。

「後発地震注意情報」が発表された場合に備え、今後、特に利用者への対応を検討する必要があるとしています。

青函フェリー株式会社 佐藤貴之 青森支店長

青函フェリー株式会社 佐藤貴之 青森支店長
「事業継続に関わる問題で判断は非常に難しいので、社内で真剣に議論しなければならない。まずは、こうした情報が出る可能性があることをどのようにお客さんに周知するか。ふだんから発信して周知していくことが重要になる」。

“空振り”ではなく“素振り”

この情報が出された場合、私たちはどのような意識や行動を取ればいいのか。

青森地方気象台 梶原浩司防災管理官

青森地方気象台の梶原浩司防災管理官は、

「そもそも地震や津波は『後発地震注意情報』が出ていなくても、突発的に発生する可能性は常にあります。社会経済活動は継続しつつ、BCP=企業の事業継続計画をはじめ、備えを改めて確認し、一段警戒を強める期間と考えてほしい」としています。その上で、「後発地震が発生しなかった場合でも、『空振り』ではなく『素振り』として、対策徹底のきっかけと捉えてほしい」。

と呼びかけています。

2年に1回程度出される見込み 対応整理を

「後発地震注意情報」は2年に1回程度と、比較的頻繁に出されることが見込まれています。今回、青森港に拠点を持つ主要な事業者に取材しましたが、いずれの会社もまだ対応を明確に決めてはいませんでした。
今後、実際に情報が出された場合に混乱が起こらないよう、対応を整理しておく必要があると思います。

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