ページの本文へ

  1. トップページ
  2. 記者記事
  3. 青森大学とコラボ! 若者にとって選挙って?大学生が調査

青森大学とコラボ! 若者にとって選挙って?大学生が調査

執筆者早瀬翔(記者)
2022年06月24日 (金)

青森大学とコラボ! 若者にとって選挙って?大学生が調査

若者の投票率は低い? その背景は?

6月22日公示、7月10日の参議院選挙。
最近では参議院選挙に限らず、選挙が行われるたびに“若い世代の投票率が低い”と言われるようになっています。

「若い世代は政治や選挙に関心がない」というのはよく聞きますが、果たして本当なのでしょうか。

若者の選挙に対する意識を探ろうとNHK青森放送局は青森大学と一緒に学生を対象としたインターネットのアンケート調査を実施しました。

アンケートで何を質問?

アンケートの準備を始めたのは5月。

政治や選挙に関心のある青森大学の学生6人に集まってもらい、アンケートでどんな質問を聞いていくか、私たちと一緒に考えてもらいました。

実は私は参議院選挙の公示日翌日の6月23日が誕生日で、今年で30歳になります。
大学を卒業してまだ7年、まだまだ若いつもりでしたが、自分の発言の節々に若いみなさんとの意識の違いを感じて「もう若くないんだ」と思っていました。


そこでアンケートの質問を考えるにあたって、まず若者たちが政治や選挙についてどう考えているのか、6人に聞いてみました。

会議の様子

たかが自分の1票入れたくらいでその人はどうせ当選しないし、だったら選挙行く意味ないだろうなと“マイナス”に思っている人もいるだろうし、自分も正直そう思うこともある。

日本って比較的安全な国なので若者にとっては“投票に行かなくても暮らせているし、別に行かなくてもいいじゃん”という考えがあるのかなと思う。

投票に行くのは時間やお金が無駄と感じている人もいる。


学生たちの意見を聞きながら、自分はどうだったかを思い返してみました。
埼玉の実家から東京の大学に通っていたころ、家に突然、友達が来て「おい、選挙行くぞ」と言われ、初めて選挙が行われていることを知り、言われるがまま投票所に行ったこともありました。

大学生は単位を取らないと卒業できないし、アルバイトもしないといけない。デートの予定もあるかもしれない。選挙以外のことに関心を向ける人も多いんだろうなと思いました。

若者のリアルは?

こうして若者の意識を共有したところで、みんなで質問を考え始めたのですが…。私たち、NHKの記者の側が最初に提案したのは「リーダーに求める素質は?」「ロシアのウクライナ侵攻への関心について聞いてみては?」といったことだったのですが、学生のみなさんは「おじさんたち何を言ってるんだ」とばかりに“ぽかーん”とした表情でした。

これは“大人”となった私たちには、若い学生の意識を探るのは無理だと感じました。そこで、6人の学生のみなさんに質問を考えてもらいました。
アンケートの対象となる若い世代と同じ目線に立った質問が次々に出てきます。

“選挙に行くことで世の中変わると思いますか”と青森大学の全学生規模で聞いたらどんな結果になるのかなと。

若者向けの公約をもっと全面的に出してほしいかどうかみたいな質問もいいかも。


どんな質問なら若者たちの “リアル”を探ることができるのか。
話し合いは夜まで続きました。

いざ!調査開始

調査の会議

その後も約1週間かけて、どうすれば学生が答えてくれるかなど、さまざまな検討を重ね、質問が決まりました。
アンケート調査の対象は、青森市とむつ市にある青森大学の県内キャンパスに通う学生1000人余り。
インターネットを通じて回答を寄せてもらうことになりました。

質問の内容

気になっている政策や、投票に行くかどうかなど。
選挙に関する18の質問でさまざまな角度から学生たちの意識に迫ります。

質問を考えてくれた学生は、キャンパスでチラシを配ったり、講義の中でアンケートを紹介したりして、学生に協力を呼びかけてくれました。

調査は6月1日から8日までで、300人近い学生が回答を寄せてくれました。
県内キャンパスで学んでいる学生の大体4人に1人が答えてくれました。
この場を借りて協力に感謝したいと思います。

見えてきた学生の“リアル”

アンケート結果

約300人のアンケートからは何が見えてきたのか。
まずは、そもそも政治や選挙にどれくらい関心があるかという質問についてです。
数字が大きいほど関心が高いことを示す、1から5までの5段階評価で選んでもらいました。
全体の平均は2.78。ちょうど真ん中の3を少し下回っていますので、全体的にはやや関心が薄いと言えそうです。

また、選挙や投票の仕組みが若者に分かりやすいと思うかについても5段階評価で聞いたところ、こちらも3を下回り2.47となりました。

アンケート結果

“これまでに選挙に行ったことはあるか”ということも聞きました。
「ある」と答えたのは、半数以上の158人。
一方、「選挙があったけど、投票に行ったことはない」と答えたのは95人でした。
政治や選挙への関心は決して高くはないものの、半数以上の学生には投票経験があることがわかります。

アンケート結果

参議院選挙に関連した質問について見ていきます。
まず、今回の参議院選挙の投票に行くかどうかについてです。
最も多かったのは「行かない」と答えた学生で全体の4割以上、120人でした。
一方、「行く」と答えたのは113人で4割近くとなりました。

アンケート結果

理由についても複数回答で聞きました。
「投票に行かない」と答えた人で55人が「忙しい」、54人が「政治に興味がない」、32人が「各党・各候補の政策を知らない」ことを理由に挙げました。
これを見ると、やはり若い大学生は選挙にあまり関心がないというように思えるかもしれません。
しかし、さらに分析を進めると、そうとも言い切れない現状があることもわかってきました。

アンケート結果

アンケートでは「選挙にいくと世の中は変わると思いますか」という質問も投げかけてみました。
「投票に行かない」とした人のうち、「変わらない」と回答した人は約64%でした。
つまり、投票に行かない学生の半数以上が“自分が投票に行っても何も変えられない”と思っているというわけです。
このことが「投票に行かない」と答えた学生が一番多かったことの背景にあるのではないかと思います。

アンケート結果

ではなぜ、学生の半数以上が投票に行っても何も変わらないと思っているのでしょうか。
その理由について自由記述で聞きました。

▽「たかが1票」「どうせ1票」などと、自分1人の投票では意味がないとする意見が半数以上を占めました。
▽また、少子高齢化で若い世代が少なくなっているため多数決では若い世代の意見は通らないといった一種の諦めのような意見も多くありました。

アンケート結果

一方、「投票に行く」と回答した人のうち「行くと世の中は変わる」と回答した人は約58%で半数を超えました。

理由については▽「1票でも価値がある」や「たった1票でも何か変わるかもしれない」といった答えが目立ちました。
▽また「投票で貴重な若者の意見を反映させたい」とか、「若い世代の投票率が上がることで若者向けの政策も増えるかもしれない」といった、投票して現状を変えようという前向きな考えも見られました。

質問を考えてくれた学生たちにはアンケートの回答の分析もお願いしました。
分析を終えた学生からはさまざまな意見が聞かれました。

大人と若者といった世代間の違う意見をどう乗り越えるか、若い世代のみならず大人側の努力で解消できないのかなと思った。

自分の意見が通らないという風に感じている人は、私が思っているよりももっとたくさんいた。

政治に関心があるけど投票に行かない人が多くいるのは“諦め”が一番強く影響していると思うので、そこをなんとか変えていければいいなと思った。


調査のとりまとめ役を担ってくれた青森大学の櫛引素夫教授は、アンケートを実施したことで私たち「大人」ではなかなか気付くことのできない若者の選挙に対する意識がわかってきたといいます。

そして、今回の調査で若者が投票に行かない理由の一端が見えてきたとして、対策を考えるべきだと話していました。

アンケート調査のとりまとめ役 青森大学 櫛引素夫教授
若い人たちには選挙は政治参画の一部なんだということを認識してほしい。投票に行ったことが“みんなで語り合おうか”というムーブメントにつながれば、なにかが変わると信じている。

調査を終えて

アンケートでは「変えて欲しい制度や仕組み」についても聞いていて、税制やジェンダー平等などのほか、NHKの受信料制度や奨学金制度などが回答にあがりました。

早瀬記者

私もアンケートの結果を分析しましたが、若い世代の中には選挙に関心がないから投票に行かないという人ばかりではなく、投票に行っても何も変えられないと“諦めて”投票に行かない人も多いのだと感じました。

想像以上に問題は根深く、いくら自治体などが「投票に行こう!」と呼びかけても、効果は限られるのではないかと思いました。
選挙に立候補する人たちには若者に向けた主張もして、若い世代が関心を持って投票に行くことができるよう意識してもらいたいと思います。

また、今回のアンケート調査に回答してくれた学生の中には「このアンケートのおかげで選挙に関心が持てた」とか「アンケートで近く参議院選挙があることを知った。投票に行こうと思った」という人もいました。

大学生たちが知恵をしぼり、そして大学生に寄りそった質問を考えたからこそ多くの回答が返ってきて、少しでも選挙への関心を高めることができたのだと思います。
若い人たちのこうした活動が、“新たなムーブメント”につながることを期待したいです。

おすすめの記事