NHK青森放送局ブログ
コロナ対策で運動場が芝生に? コロナ対策交付金 青森での使われ方を全部調べてみました
細川高頌(記者)
2022年03月14日 (月)

15兆1760億円
これは、国が新型コロナ対策に取り組む全国の自治体を支援するために令和2年度に創設した、「地方創生臨時交付金」の予算額(令和3年度末時点)です。その財源は税金や国債。つまり私たちのお金です。
この交付金、青森県ではどのくらい交付され、どのように使われているのでしょうか。
疑問に思った私は、政府や青森県、県内市町村のホームページを調べてみました。しかし、どこを探しても県内でこれまでに交付された額や使いみちについて、全体像がわかる情報は見つかりませんでした。
そこで、県と県内40市町村にアンケート用紙を配り、調べてみることにしました。
青森県の交付額は681億円
質問したのは、令和3年12月時点の交付額(予定含む)と、具体的な使いみちについてです。
去年12月上旬の回答期限までに返答があったのは27自治体。
返答がない自治体には個別に電話して回答を催促しました。
ようやく回答が出そろったのはことしの2月18日。
その金額を足し合わせると、合計は681億8000万円にのぼることが分かりました。
内訳は▽県が344億7700万円と全体の約50%を占め、▽青森市が44億7300万円、▽八戸市が42億9700万円、▽弘前市が33億7200万円などとなっていて、人口の多い自治体ほど交付額が多くなる傾向にありました。
一方で、交付額を人口で割った人口1人あたりの金額では▽佐井村が13万9000円と最も多く、次いで▽西目屋村が13万円、▽新郷村が11万3000円などとなり、人口が少ない自治体ほど金額が多くなる傾向にありました。
交付金の使いみちは?
交付金は新型コロナ対策のためであれば自治体が原則として自由に使うことができます。
具体的な使いみちを一つ一つ確認していくと、その多くは▽マスクや体温の測定器、消毒液などの購入費用や、▽コロナ禍で収入が減少した事業者への給付金などに充てられていましたが、中には、新型コロナ対策との関連が分かりにくい事業もありました。
このうち新郷村では、2億4100万円の交付金のうち約5700万円で、村の観光施設にあるテニスコートを改修したほか、コテージを整備するなどしました。
村は、感染の収束後を見据えて観光客の誘致を図るためとしています。
また、蓬田村では2億4000万円の交付金のうち約960万円をかけて、畑の作物を食い荒らすサルなどの有害動物を捕獲するためのわななどを整備しました。
動物がわなにかかると役場の担当者のもとに自動でメールが届く仕組みで、村は、農家との接触機会が減り、感染拡大防止などに役立ったとしています。
横浜町では、約480万円かけて移動式のキッチンカーを整備しました。
軽自動車を改造したこのキッチンカーは、健康に配慮した献立の紹介など町民を対象にした食事指導に活用されていて、町は新型コロナの外出自粛による健康への影響を減らす効果があるとしています。
キッチンカーは令和3年3月に導入してから令和4年2月末までに19回使用したということです。
五戸町では、約1億3000万円で五戸ドームのグラウンドを土から人工芝に張り替えたり、空調設備を整備したりしました。
土ぼこりがまうと空調設備の故障の原因になり、感染対策に影響が出る可能性があるためとしています。
さらに田子町では、約3800万円の計画額で、町民グラウンドにLEDの照明を設置しています。
照明によって夜間でも使用できることから、利用者の分散によって3密を回避することができるなどとしています。
「使いみちが適切かは住民が判断」
交付金のこうした使いみちに問題はないのでしょうか。
地方財政が専門の青森公立大学の樺克裕教授は、次のように指摘しています。
「基本的に新型コロナ対応であれば使いみちは自由度がある。地方交付税が減らされ、地方税収も伸び悩む中で、自由に使える財源というのは、どの自治体も欲しいというのが現状だと思う。その中で地方創生のため、将来のまち作りのために使えるというところで、一見すると新型コロナ対応とは関係のないような支出もある。支出が有効かどうかは住民が判断するべき部分だ」
説明責任は自治体に
一方で、新型コロナ対策交付金を使った事業の内容や効果についての説明責任は、自治体にあります。
自治体が新型コロナ対策交付金を使って事業を行う場合、事業計画を作成する必要があります。
それを内閣府が確認したうえで、総務省が交付を決定する流れとなっています。
国は、事業の説明責任はあくまで自治体にあるとしていて、各自治体に、交付金を活用した事業の実施状況と効果をホームページなどで公表するよう通知しています。
しかし、県内の自治体で交付金の使い道をホームページで公表していると回答したのは3月3日の時点で14。全体の3割ほどにとどまっていました。
青森公立大学の樺克裕教授は、自治体は交付金の使いみちを積極的に公表すべきだと指摘しています。
「自治体はホームページや住民の広報紙、SNSなども活用して交付金の使いみちを公表する。そして一つ一つの使途をみていけばそれは全て住民に関係しているので、住民は関心をもって交付金の使い道を検証し、より有効な交付金の活用を自治体と住民が一緒になって考えていくことが重要だ」
交付金の使いみちを調べてみて
県内で新型コロナの感染が初めて確認されてから2年がたちました。
私はこれまで、新型コロナの影響で苦しんでいる事業者や医療従事者など、たくさんの人に話を聞いてきました。
本当に必要な場所にお金が使われているのか、広く検証できるようにするためにも、自治体は情報を積極的に公表して欲しいと思います。