物語の舞台は龍が棲む国、今なお語り続けられる神話の国として知られています。
そこに棲むという龍と「龍の歯医者」達とはどんな存在なのでしょうか。本項は龍や彼らの仕事を全六回にわたって紹介し、その秘密の一端に触れようとするものです。
龍は人間が地上に現れる遥か以前からこの地に棲んでいました。常に空を飛び続けており地上での姿を見た者はいません。巨大な口に並ぶ三列の歯が特徴で、この歯こそが龍の力の源であり唯一の弱点でもあります。
龍の棲む国が危険にさらされた時、龍はその国を守るために力を使うことがあります。これは遠い昔に結ばれた龍と人の契約にもとづくものだと伝えられています。
龍の歯からは虫歯菌と呼ばれる不思議な生き物が発生し、歯を蝕み龍を弱らせてしまいます。この虫歯菌を駆除し代々龍の歯を守っているのが「龍の歯医者」です。
龍の歯医者になるためには特別な試験を受ける必要がありますが、通過できる者は極まれです。
龍の歯医者たちは龍の顎の下に作られた宿舎で寝泊まりし、龍と共に暮らしています。宿舎には歯の治療に必要な道具類の他に、寝床、食堂、風呂場など生活のためのものが揃っています。それゆえ彼らが地上に降りる事は殆どありません。
龍の背には龍と交信している神官たちの社や、国防を龍の力に頼る軍人たちの兵舎もあります。
龍の歯医者たちは特殊な道具をいくつか使用しますが、その代表的なものが「龍爪」と呼ばれる仕事棒です。龍の爪や皮膚から作られたもので、龍の力を宿すため虫歯菌への攻撃に有効です。
龍爪は変形させる事ができ、変則的な動きをする虫歯菌を捉えるのに役立ちます。但しこれは龍の力の一部であり、龍から離れるとその力は失われてしまいます。
虫歯菌たちは生物ではなく荒魂や魑魅魍魎に近い存在です。天災や戦争状態になると数が増える事が確認されており、人間の魂との関係性が指摘されています。
歯に現れるという共通点を除き虫歯菌には大小様々な種が確認されています。特殊な条件下でのみ観測されるものも多く、今後未知の菌が出現する可能性も示唆されています。