NHK

アニ × パラ 第2弾 パラ陸上競技 原作:窪之内英策
窪之内英策
“風を感じた”あの日からすべてがはじまった。車いすの少女が、アスリートへと変わる物語を「ツルモク独身寮」の窪之内英策が紡ぎ出す。
河川敷でひとり寂しげにたたずむ車いすの少女。彼女に走るきっかけを与えたのは、あの日出会った“風”と“少年”だった。 河川敷でひとり寂しげにたたずむ車いすの少女。彼女に走るきっかけを与えたのは、あの日出会った“風”と“少年”だった。

アニ×パラのリアル

anipara's real
  • 窪之内英策×パラ陸上競技

    窪之内英策×パラ陸上競技

    “風を感じた”あの日からすべてがはじまった。
    車いすの少女が、アスリートへと変わる物語を「ツルモク独身寮」の窪之内英策が紡ぎ出す。

  • テーマ曲 藤原さくら「Just the way we are」

    テーマ曲 藤原さくら「Just the way we are」

    episode2 パラ陸上競技のアニメとテーマ曲を手がけた藤原さくらのコラボバージョン

  • 窪之内英策のこの作品への思い

    原作・窪之内英策が語る
    自分はダメ人間なのでこの作品に向き合う!

    自分自身と作品を重ね合わせ、窪之内英策が語った思い。

  • アニメ制作はこう始まる

    原作って何?演出って何?アニメ制作はこう始まる
    原作・窪之内英策&監督・谷東の初打ち合わせ

    原作&監督はこう考えている! アニメ制作の始まる瞬間に密着!

  • 窪之内英策が義足陸上を取材

    義足ってどういう感触?窪之内英策&谷東が
    小松茉奈実をディープに取材!

    原作・窪之内英策と監督・谷東がパラ陸上競技選手・小松茉奈実にかなりディープな質問を連発!

  • 藤原さくらインタビュー

    藤原さくらが語るテーマ曲に込めた思い

    藤原さくらの感じたアニメと自分自身の共通点。"何気ない一言"で人は変わることができる!

  • 監督・谷東 作品への思い

    監督・谷東の感じる不安!?

    制作を目前に監督・谷東が感じる不安とは…?

  • パラリンピックを目指す義足ランナー

    パラリンピックを目指す義足ランナー 小松茉奈実さん

    大学生でパラリンピック出場を目指す小松茉奈実さん。彼女が義足で初めて走ったときに得たものとは?

  • スタッフロール

    スタッフロール

    episode2 パラ陸上競技 アニメ制作スタッフ

more
PICKUP

それぞれの“思い”を語る

about
原作:窪之内英策インタビュー
“少年”と“車いすの女の子”のストーリーに込めた思い

原作:
窪之内英策インタビュー

“少年”と“車いすの女の子”のストーリーに込めた思い

voice01
Interview

本日は、よろしくお願いします。窪之内先生は作品制作にあたって、あるインスピレーションが浮かんだとお聞きしました。

窪之内 お話をいただいたとき、“少年”と“車いすの女の子”との恋物語で進めていこうと思いました。最初に浮かんだインスピレーションというのは、「タンポポの種が飛んでいくには風がなければいけない」というものです。冒頭のシーンとして少し考えたのは、車いすの女の子がタンポポの綿毛を見つけて手にした瞬間、少年が突然横から顔を出してきて、勝手に吹いてしまって種がばーっと飛んでいく。そのときに少年が、「風が吹かなきゃ種は飛ばないよ」という言葉を口にするというもの。つまり、「風を待つのか自分で吹かせるのか」。それが僕の中にひとつのキーワードとしてありました。最後にもそのキーワードを持ってきて、いつまでも風を待っているのではなくて、彼女は自分から動いて今から風になろうとしているんだ、自分で風を吹かすんだ、というところを伝えられたらと思いました。

また、その間、二人の関係性がここに至るまでに何があったのかというのも見せていきたいですね。彼女が車いすから競技用の義足を着けるまでのプロセスや葛藤もあるはずだし、その中で少年がどの様にかかわってきたのかというのもあります。一旦、距離を置いたこともあったのかもしれないし、またふとしたきっかけでつながる何かがあったのかもしれない。いろんなイマジネーションの幅を持たせたままで、冒頭のコンテをつくってみました。コンセプトとして、どうかな。

 いいと思いますね。

窪之内 最後のシーンも、彼女がまさに走り出す瞬間と、彼女自身が風となってタンポポの種を飛ばしていくイメージをリンクさせました。二つがリンクした演出ができたら、見ている人も何か感じてくれるんじゃないかな。さらに、ストップウォッチを待っている少年が登場すると、二人の関係性も感じられますね。

それは、恋愛的な部分というよりは、少女の成長を表現しているということですよね。

窪之内 そうですね。恋愛の部分はあくまで隠し要素にしたいですね。たぶん二人にはほのかな恋心はあって、でも同時に競技に対してのパートナー的な絆が含まれているというくらいの方が作品のバランスとしていいんじゃないかな。。

作品のテーマやメッセージについては、どのように考えていますか。

 人はそれぞれいろいろな問題抱えているじゃないですか。足を失うといった障害を負った人だけではなく、結局はみんな個人的な問題を抱えながらも置かれたポジションで頑張っているという、そういったメッセージの伝わり方にしたいなと思っています。

窪之内 僕は以前、高校生相手の障害者スポーツのマンガの講評をしたときに、“見える障害”と“見えない障害”があるということを伝えました。“見える障害”というのはそのままの意味なのですが、“見えない障害”というのは普通の人もみんな持っている、心の傷とかね。もしかしたら、少年の方がそういった障害を持っていてもいいんですよ。つまり、彼女は“見える障害”と闘っていて、少年は“見えない障害”と闘っているという構図です。

 面白いですね。

窪之内 最初は、お互いにぶつかりあっていた二人が、最終的に何かを補いあって、同じ競技場に立っているわけです。

 “見える障害”を持っている彼女だけがかわいそうで、かわいそうな人が頑張っているという見え方にはしたくないですね。

窪之内 絶対しないほうがいい。そこはもう、みんな一緒なんだよっていうことを伝えたいわけですからね。どんなに体が健康でも、心が不健康だとまったく身動きとれなくなってしまうし、できることもできなくなってしまいます。“見える障害”と“見えない障害”は、同じことなんだよってね。このエピソードを、どの様に少年にかかわらせるかは難しいところですが、いかに自然に、絵だけで見せられたらいいなと思います。

今回はできるだけセリフの少ない絵をいかした演出にチャレンジされたんですよね。

窪之内 マンガでも同じですが、あまり説明的すぎると逆に説教くさくなるというか、押し付けがましい感じになるし、あまり言葉に頼りすぎると陳腐になってしまいますから。それよりも、いかに絵面だけで自然にポイントを見せてあげられるか。絵だけの情報の方が一生懸命に見ようとするから、余計イマジネーションも働くし、見る人に考えさせてあげることができると思うんですよね。二人の関係性や彼女の成長なども、イマジネーションの伸びしろをきちんと残した状態でやれたら面白いかなと思っています。

貴重なお話を、ありがとうございました。

テーマ曲:藤原さくらインタビュー
“何気ない言葉のおかげで、人は変われる”

テーマ曲:
藤原さくらインタビュー

“何気ない言葉のおかげで、人は変われる”

voice02
Interview

今回はまず、窪之内英策先生が描かれた登場人物の絵を見て曲を作っていただいたということですが、どういう部分にインスピレーションを受けましたか。

藤原 本当にかわいい女の子と男の子だなっていうのが、絵を見て思った最初の印象でした。タンポポを持った女の子に、男の子が「風が吹かないと、飛ばせないよ」って言うシーンがあるんです。“風”っていう言葉がずっと心の中に残って、サビにも「風になって走る」といったような爽やかな言葉をたくさん出したいなと思いました。

鳥が飛んでいる様子、すれ違っていく人たち、街並み、といった感じも出せればいいなと、言葉を選んで歌詞を書いていきました。

曲のテーマとしてはどういったものをイメージされましたか。

藤原 曲のテーマは、最初に「タンポポは風が吹かないと飛ばせないよ」つまり、一歩踏み出さないと何も始まらない、というキーワードを頂いていました。これは、私自身にとっても以前から大きなテーマでした。一歩踏み出して人前で歌ってみた結果、もともとコンプレックスだった低い声を「すごくすてきな声だと思うよ」って褒めてもらえて自信がついて、今もこうして歌っています。あとは前に進む勇気をくれた人に対しての感謝や、恩返ししたいという自分の気持ちも加えて表現していきました。

曲やメロディーのアイデアは、もともとあったんですか。

藤原 キラキラして明るく、聴いた人が少しでも元気になれるような曲にしたいな、と絵を見せて頂いて思いました。最初に見た絵は、まだ色が付いてなかったんですけど、それを見て感じた、私の中にあったそのままでいちばん最初に作った曲が採用されました。それぐらい刺さるものが、絵や設定の中にあったんだと思います。先日、完成したアニメーションを見て、絵だったものが生きて動きだしている感じを受けました。そこに、音楽で関われたことが、本当にうれしかったです。

アニメの中で、印象に残っているシーンはどこでしょう。

藤原 男の子が落ち込んでいる様子の女の子に歩み寄っていくとその女の子が輝きだすところです。自分なんか…と思っている人が、誰かのささいなひと言から勇気をもらったり自分はこれでいいんだって思えることってあると思います。私自身、全然自信が持てなかったときにかけられた何気ない言葉のおかげで、こうやって歌を歌っています。大丈夫だよとか、すてきだよとか、そういう一言で人は変われると思うんです。この女の子も、きっと男の子がいたから走ろうって思ったんですよね。そういった淡い恋心も歌詞に書きたいなと思いました。

パラ陸上競技の選手に会っていただきましたが、話をしてみて感じたことはありますか。

藤原 皆さん、自分がどういう状況であっても、今できることっていうのをちゃんと分かっている人たちだなという印象を受けました。頑張っている人はやっぱりかっこいいですよね。すごく元気をもらいました。

陸上競技について、どう思われますか。

藤原 私も中学生のときに陸上部に入っていたので、今日トラックを見て、すごく懐かしいと思いました。当時の練習は相当きつかったですよ。ゼエゼエしたり、先生に怒られて泣きながら走っていたこともありました。「何で苦しい思いをして走っているんだろう」って考えながら、練習していたこともありますが、タイムが上がって自己新記録が出たときに全部吹っ飛ぶんですよね。きつかった練習とか、やりたくないって思っていた記憶とかなくなって、自己新記録という目標を達成した喜びが大きくなります。そこが陸上をやっていてすごく楽しいと思っていた部分でした。あんなに怖かった先生の笑顔が見られたり、精神的にも鍛えられたりして、大きな達成感がありました。

パラリンピックの陸上についてはいかがですか。

藤原 自己新記録が出せたときがうれしい、ということは陸上をやっている選手ならば同じだと思います。みんな、きっと自己新記録を出して「また強くなれた」と思うことがやりがいを感じるポイントなんだと思います。先日、パラ陸上競技選手が走る様子を拝見したのですが、すごく感動しました。それは、自己新記録に向かって頑張っている人を間近で見られたことに対する感動だと思います。私が今までずっと知っていた陸上も、パラリンピックも、どちらも本当にまっすぐな気持ちで取り組むスポーツなのだと改めて感じられたことがすごくうれしかったです。

パラ陸上競技選手 小松茉奈実
“陸上を始めて、自分自身に限界は絶対ないと思うようになった”

パラ陸上競技選手
小松茉奈実

“陸上を始めて、自分自身に限界は絶対ないと思うようになった”

voice03
Interview

今回、完成したアニメを初めてご覧になったということですが、いかがでしたか。

小松 「私がいちばん最初に義足で走ったときには、風を切るような思いがした」と窪之内英策先生やスタッフの皆さんにお話したんです。それがアニメの中で象徴的に使われていて、とてもうれしかったですね。主題歌も、「風を切る」ということがテーマになっていて、すごく感動しちゃいました。スタッフの皆さんに思いが伝わったということに感激しています。

このアニメは、アスリートの成長の話でもあるけど、ラブストーリーでもあると思うのですが。

小松 私自身は、まだこんなにすてきな出会いはしていないですけど、すごくいいなあと思いましたね。短いなかで、登場人物の成長が丁寧に描かれていますね。

これまでの人生を振り返って、小松さん自身と重なる部分はありましたか。

小松 最初の場面かな。車いすの女の子が、他の子たちが遊んでいるのをうらやましそうに眺めている姿とか、昔の自分を思い出しました。陸上に出会って前向きになっている姿も、今の自分と重なる部分があって感情移入しながら見ちゃいましたね。

小松さんが前向きになれたのは、誰かの言葉やフォローがあったからなのでしょうか。

小松 私の場合、義足を作ってくれている臼井二美男さんという方にずっと、陸上をやってみないかと誘っていただいていたんですよ。1年間くらいは自分が義足であることを認めたくなくて、なかなか参加する気持ちになれなかったんです。しかし、家族や友達に相談してみたら、「新しいことに挑戦してみるのもいいんじゃないか」と後押ししてもらえた。だからこそ陸上に挑戦できたと思うので、身近な人からの後押しの言葉は大切だと思いますね。

誘われてから一歩を踏み出すまで、1年間くらい要したということですか。

小松 はい。高校1年生の春に陸上に誘っていただいたんですが、2年生の春になって、やっと参加したので。本当に1年間踏み出せなかったんですよね。今、大学3年生なので、競技を始めたのは4年前ですね。陸上へのお誘いや後押しの言葉がなかったら、まだちゃんと「義足の自分」に素直になれていなかったのではと思います。普段の生活で使用している義足は、見た目は全然義足とはわからないんです。でも、陸上競技で使用する義足は、見てすぐ義足とわかる“義足そのもの”という感じがして恥ずかしい気持ちがありました。しかし、それを付けて走ることによって、義足である自分を素直に認めることができたし、それって恥ずかしいことじゃないと自分の中で捉え直すことができました。

2020年のパラリンピックに向けて、アスリートとしての目標や課題はありますか。

小松 今年の夏前になってから先輩たちの誘いもあって、練習を週4回くらいに増やしました。いま取り組んでいる100m走は、スタートダッシュが命なんですよ。そこでミスをしたら、その後、絶対に取り返せないので、スタートダッシュでのフォームや、体の傾け方とかを意識しなければと思っています。でも、まだ自分のものにできないので、課題になっていますね。

他国の選手のレベルの高さや、世界の壁は感じていますか。

小松 世界の壁は高いだろうな、とは思いますけど、頑張り次第では壊せるんじゃないかなって。陸上を始めて、自分自身に限界は絶対ないと思うようになりました。だから、壁が高かったとしても、登って登って壊していきたいですね。

パラリンピック選手を応援する日本中の皆さんに対して、パラ陸上をこのように楽しんでほしい、といったメッセージはありますか。

小松 日本の方って、まだまだパラリンピックは“障害者のスポーツ”というイメージがとても強いと思うんです。「義足が痛そうだな」とか、「かわいそうだなあ」とか。でも、本人たちは全く違っていて、全然痛くないし、全然かわいそうでもない。そういう目線ではなくて、「すごいことをしているな」とか、「すごいことができる人だな」という感想を持っていただきたいですね。

アスリートとして、日本の中でパラスポーツには今後どうなっていってほしいですか。

小松 今どんどん有名になってきていますが、さらに多くの人に興味を持ってもらいたいですね。昔はパラスポーツ自体をわかっている人が少なかったのですが、最近はパラ陸上をやっていると言うと、「あのすごいバネみたいな義足で走っているんでしょう!」と言ってくださる方も多いので。さらに多くの人に広がっていくとうれしいですね。本当に走っている姿とかかっこいいので。

アニメを通じてパラスポーツが世の中に伝わっていくことで、興味を持ったり、小松さんのように陸上を始めたりする人も増えるのではないでしょうか。

小松 そうですね。スポーツをしたくてもできない子や、パラスポーツができる環境がないという子はたくさんいると思います。なので、パラ陸上をメジャーにしていくことで、そういう子たちに「あなたは走れないんじゃない。競技用の義足を付ければ、ちゃんと走れるんだよ」ということが届けばいいなと思いますね。

ありがとうございました。これからの活躍に期待しています。

VOICE

プロフィール

profile
窪之内 英策原作

代表作「ツルモク独身寮」「ショコラ」は翻訳出版のみならず、テレビドラマ化されるなど、国内外でも広く展開された。現在はイラスト制作を中心に活動中。色鉛筆やマーカーを用いて描き出す、美麗で生き生きとしたキャラクターたちは 年齢問わず多くのファンを魅了し、特に若い女性からの支持を得ている。 最新作は、日清食品カップヌードル テレビコマーシャル ”HUNGRY DAYSシリーズ”「魔女の宅急便 編」「アルプスの少女ハイジ 編」のキャラクターデザイン。

VOICE
藤原 さくらテーマ曲

2014年3月、高校卒業と上京を機に、インディーズデビュー。テレビCMでの歌唱や、テレビドラマへの曲提供で話題に。2015年3月、メジャーデビュー。2016年4月からスタートしたフジテレビ系月9ドラマ「ラヴソング」にヒロイン役として出演し、演技初挑戦ながら存在感を発揮。このドラマ主題歌「Soup」はファーストシングルとしてリリース。 2017年5月にリリースしたフルアルバム「PLAY」などで、自身初の全国ホールツアーを開催した。

VOICE
谷 東監督

アニメ監督・演出・映像ディレクター。兵庫県出身。2003年DLE入社。代表作に「監督不行届」「テルマエ・ロマエ」などのテレビシリーズがある。

VOICE
VOICE

©高橋陽一/NHK ©窪之内英策/NHK ©勝木光・講談社/NHK