アナウンサーの情報をくわしく みなさんの元へ

地震の緊急ニュースの伝え方 2024NHKアナウンサー新人研修 講師は糸井羊司アナ 池田伸子アナ 江原啓一郎アナ

  • 2024年6月3日

2024年4月に入局した、12人の新人アナウンサーたち。2か月にわたりNHKアナウンサーとしての基礎を学んできた彼らも、いよいよ全国各地の放送局へと赴任。研修終盤に行われたのは、「もし、ニュース番組の放送中に地震が発生したら・・・」という緊急報道の研修です。緊張感に満ちたスタジオからお伝えします。

命を守る NHKの緊急報道

NHK最大の使命の一つが「防災・減災報道」です。公共メディアとして1人でも多くの命と暮らしを守るため、地震や津波、台風などの災害時に正確でわかりやすい情報をより早く伝えることに全力で取り組んでいます。また、全国のNHKアナウンサーは、災害が予想されるとき、災害が起きたとき、命を守るためにどう呼びかけたらよいか、「命を守る呼びかけ」の改善を重ねています。

今回、新人アナウンサーたちが実習するのは、そんな緊急報道の対応。赴任した地域放送局で6分間のニュース番組の放送中に、地震が起きたらという実践的な研修です。研修所にある模擬スタジオで行われました。

講師としてスタジオ内でサポートするのは、糸井羊司アナウンサーと、池田伸子アナウンサーです。糸井アナは札幌放送局に勤務していた2018年に北海道胆振東部地震を経験。全道で大停電が起きる中で、発生初日から数日間、ライフライン情報のラジオ放送で中核を担ったことがあります。
(👉糸井アナが北海道胆振東部地震での経験を記録したWEB記事はこちら

そしてもう1人、スタジオの外から新人アナにマイクで指示を出すのは、9年目の江原啓一郎アナウンサーです。現在、糸井アナは「NHKニュース7」、池田アナは「午後LIVE ニュースーン」、江原アナは首都圏で放送されている「首都圏ネットワーク」と、それぞれがニュース番組でキャスターを務めています。

正確・確実な情報を

いよいよ実習スタート。スタジオにやってきたのは、山口放送局・石井晶也アナウンサーです。本番さながらの環境に、緊張した様子の石井アナへ、先輩アナたちが声をかけます。

石井アナ

顔が硬くて・・・。

池田アナ

始まるまでは声を出してもいいし、マッサージしてみたり。

糸井アナ

リラックスしてね。

江原アナのカウントダウンで始まります。

江原アナ

開始まで、10秒前、9・8・7・6・5秒前・・ 3・2・1。

訓練が始まりました。赴任した山口放送局で通常のニュースを読んでいるときに、震度4程度の地震が発生した想定で、対応します。

石井アナ

(※訓練用の想定原稿です)
ここで地震の情報をお伝えします。午前11時45分ごろ、中国九州地方でやや強い地震がありました。

アナウンサーは、次々と入ってくる震度速報や震源、地震の規模、津波の有無などを、瞬時に整理し、読み上げなくてはなりません。

石井アナ

(※訓練用の想定原稿です)
新しい情報が入ってきました。震源地は伊予灘、震源の深さは80キロ、地震の規模を示すマグニチュードは5.1と推定されています。この地震による津波の心配はありません。

緊急報道では、正確かつ確実に基礎情報を伝えることが重要です。石井アナ、1つ1つのことばを丁寧に声で届けていきます。

研修の模擬中継画面より

さらに情報を読み上げるだけでなく、中継の映像を見て、即座に自分のことばで今の状況を伝えます。

石井アナ

真ん中に車が走っているのがわかります。やや映像が揺れていました。

初めてとは思えない冷静さで、6分間を見事に伝えきった石井アナ。収録が終わると、周囲からは自然と拍手が起こりました。
しかし、本人の表情は晴れません。

山口放送局 石井晶也アナウンサー
続々と新しい情報が入ってくるなかで、どれを伝えるべきなのか。短い時間のなかで取捨選択するというのがいちばん難しかったです。(情報が)1回で伝わるよう意識できたかなとは思いますが、やはり慌てて言い間違えてしまったりだとか・・・。情報を伝える立場として、自分が慌てて、とりあえず目の前にある文字を追いかけているようではダメだなと。これから精進していこうと思います。

しんしに取り組んだからこそ感じる課題。
しかし、横で見守った糸井アナは石井アナのある点に着目し、こう評価しました。

糸井アナ

伝え方のトーンですね。(石井アナは)流ちょうにしゃべっている感じではなくて、でもそれがいいんです。しゃべりはテンポがよければいいかというと、そうではなくてきちんと受け止められる間があるかとか、適度に緩急がついているかとかがすごく大事なことだと思うんです。石井アナはとにかく適度な間があって、ペースが乱れない。だからそれがすごく安定感につながっているなと思いました。

文字をただことばにするのではなく、見ている人、聞いている人に届くように伝えたいという石井アナの思いが、しっかりと表現された実習となりました。

地域の方に届くことばを

続いては徳島放送局・羽深未奈乃アナウンサーです。緊急報道では、地震の情報を伝えると同時に、状況に応じて、避難行動や注意を促す「呼びかけ」も行います。

羽深アナ

徳島県内は橋が多い地域があります。川の近くや海からは離れてください。また、避難の際には、橋や周囲の状況に十分に注意をしてください。

羽深アナが赴任する徳島県は、約500の河川が流れていることから水の都とも呼ばれていて、全国的に見ても橋の多いところだと言われています。このことを実習前に徳島に訪れた際に知ったという羽深アナ。地域の特性に合わせ、自ら考えたことばで呼びかけます。

研修の模擬中継画面より
羽深アナ

現在、徳島市内の映像が映っています。眉山の近くには吉野川も流れています。川の近くからは離れるようにしてください。

繰り返し注意を呼びかけた羽深アナ。そこには、緊急報道に対するある思いがありました。

徳島放送局 羽深未奈乃アナウンサー
「この声でどれだけの命が守れるんだろうか」ということを考えたいと思っていました。(徳島は)橋がたくさん架かっている地域があるとか、市内は吉野川が大きく流れているなとか、自分の中で状況のイメージが浮かんだので、橋が崩れないようにとか、川が氾濫していないかとか、生活者としての視点を持って注意すべきところを伝えたいなと。これから徳島の地で新しくアナウンサーとしての仕事をさせてもらうので、地域の人の心に一番届く声やことばを追求していきたいと思っています。

となりで見守っていた糸井アナも、羽深アナがすでに徳島の地域特性をつかみ始めていることに驚きを隠せません。

糸井アナ

大事にしたいのは「経験をことばにする」ことで、これには頭の中でたくさん引き出しをつくっておくことが必要なんです。そして必要なときにその引き出しをパッと開いて、放送できちんと伝えられる。これはなかなか難しいことです。でも羽深さんはきょう初めて座ったあの環境で、その引き出しをパッと開いてことばにした。これは秀逸です。

アナウンサーとして最善を

こうして、12人すべての新人アナウンサーが収録を終えて、実習は終了。講師を務めた糸井アナは、彼らの姿を「頼もしく感じた」と話してくれました。そして、それぞれの地域放送局へと飛び立つ彼らに、こうエールを送りました。

今回の研修でうれしかったのは、もうすでに自分の赴任する地域に、どういう特性があるのかをつかみ始めている人が何人もいたことです。初任地は第2の故郷です。本当にどこの地域に赴任しても、地域の皆さんが心から温かく迎えてくださる。その温かさに支えていただきながら、「見てくださる人のために自分はどんなふうに役に立てるのかな?」と考え、地域の人のために最善を尽くすことを貫いてほしいなと思います。

新人 いよいよ赴任地へ!

これまで4回にわたってお伝えしてきた新人アナウンサーの研修リポートもこれが最終回です。12人の新人アナウンサーのプロフィールと赴任先はこちらの記事👇で詳しくまとめています。やる気にあふれた彼らを、皆さまどうぞよろしくお願いいたします!

ほかのおすすめ記事

      ページトップに戻る